「64」「こけし夜話」に今晃さんを紹介

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鳴子こけし祭りでは、「たまごや」さんを拠点にして、コーヒーを飲みながらいろいろな方々と話をしていました。

照井順一さんともお会いし、1984年(昭和59年)11月3日発行の「こけし夜話」を見せていただきました。その中で、「雪の工人」と表題して、今晃さんを訪ねた様子とこけし2本(57年作)を紹介されています。

後日、このHPの「今晃(こけし)の文献と資料」に掲載します。

 

「雪の工人」

弘前駅からしばらく車に揺られ岩木山を登り出すと、嶽温泉があり平原の一隅に雪に埋もれて今晃がいた。約束の時間をとうに越していたので、もう来ないと思っていたと言う。見回すと、雪の庭にある窓のそばでロクロが低い唸りを上げていて、だるまストーブはあるが火の気はない。近づいてみるとロクロの回りには木地に幾度も描かれた習作が落ちていた。

町に住めば不便もなかろうにと朴訥な田舎びとがストーブの木屑に火をつけるのを見守る。かわいげなこけしが土産品として幅をきかす昨今、彼のように風土臭の強いこけしがどれだけ売れるかと心配にもなる。そして、仕事場に師匠長谷川辰雄のこけしの写真を置いてあるのを見、仕事への真剣さを感ずる。

木屑が燃え尽きる頃、呼び寄せた車の音で挨拶もそこそこに外へ上がる。青空と白銀がまぶしい、注文の3本のこけしより、転がっていた手策を入手できとても嬉しく帰り道に着いた。

彼は創作力も風土の匂いも十分あるから、師匠のこけしからは、それがなぜお土産品となり得たかをよく学んでほしいと思った。

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