初めて、ヤフオクから古品のこけしを落札しました。三上文蔵作旭菊模様尺こけしです。かなり褪色しているのですが、独特なフォルムと微かに見える眼差し面相に惹かれました。 蒐集歴2~3年の当時(平成19年)は、工人さんに直接お会いしてお話を伺い、こけしを見せていただくことが楽しくて、カメイ美術館発行の「工人禄」車で走り廻って訪ねていたものです。こけしへの審美性がまだよく見えない今は、「古品には手を出さない。現役工人さんのこけしを蒐集する」ことを肝にしていました。そんな中で文蔵さんのこけしに出会い、入札をしました。今さんにその話をしたところ「そのこけしの写しを作ろうか!」とのことで、平成19年9月15日(「G117」)、6本送られてきました。今さんのこけしの特徴であるが、描彩されたこけしの1本1本が微妙に違った表情を醸し出しています。結果、作られたこけしの全てに惹かれ、その全てのこけしに魅了されてしまいます。
(工人さんにこけしの写しや復元などを依頼するときは、工人さんの製作負担を鑑み、制作本数は、複数本と言いますか、私は5本以上の買い上げ製作でお願いしています。)
長谷川辰雄さんの哀調味の表情は魅力的です。特に初期の辰雄作に惹かれますが、辰雄さんはその描彩をあまり気に入らなかったらしく、晩年はその描彩を変化させました。
平成23年3月31日、辰雄作アヤメ模様8寸写し(「G14」)を作っていただきました。今さんも「あの哀調味、あの眼差しは難しいヨ!」と。今晃さんのこけしは、何々型・風を含め、「全てのこけしが今晃さんの世界で昇華され」、作り出されています。特に、今さんが求められた「あるべき原津軽のこけし」、所謂、「本人型」があります。ある時、今さんから「僕は、『今晃の世界』というような、そんな狭い、小さな世界で、こけしは作ってはいないヨ」そして、「僕が作ってきたのは『こけし』とは、どこか違うのだなあ~、ただ、『おンぼこ』を作っているんだ」と語られた。「今さんは、私達が言っている『こけし』ではなく、まさに『木おぼこ』を作ってこられた」と、今さんのこけし制作への原点、その思いに気づいた。