高橋通さんと純子さんから「坂入ボックス」のこけしが届きました。現在、お二人はこけし制作を休業されています。
平成23年3月11日の東北地震での福島原発事故で、南相馬市原ノ町で生活をされていたお二人は、現在も山形市旅籠町(「みちのくこけしまつり」会場のナナビーンズ近く)で避難生活をされています。原発事故当初は、白河の知りあい宅に避難、そして、南会津町のペンション、半年後に、山形市での避難生活をされ、1週間おきに、原ノ町に通われて、こけしを製作されていました。避難当初は、その逆境の中で、心身共にかなり苦労をされながらも、緊張感や意識の高揚などもあり、鳴子こけしまつりでの実演、みちのくこけしまつりでの「内閣総理大臣賞受賞」などなど、鬼気迫る凄いこけしを生み出されていました。そして、私の退職記念(23年3月退職)こけしは製作できず、その2年後に、通さんの尺6寸と順子さんの尺1寸が届きました。この2本もお二人の気持ちのこもった素晴らしいこけしです。
原ノ町の自宅は、原発からの距離は23kmで、原発事故補償対象の20km圏内に若干の距離が足りなく、苦境にたっておられます。現在も、休業補償などの交渉をされていますが、なかなか、難しいようです。山形市との二重生活などなどで、心身共に疲れ果てておられ、順子さんは昨年頃より、通さんは今年5月以降こけし制作を休業されておられます。10月3日、みちのくこけしまつりの折、お二人と夕食を共にしました。
「原ノ町(自宅)周辺には、子どもの姿がない(当然、その子達の両親の姿もない。)老人の方々、土建業の労働者が多くいるだけである。町の機能、構成が成り立たない」」「近所のスーパーは倒産し、コンビだけがはやっている。一番売れるのは、水だ。」「近所には、放たれた牛や豚、イノシシやイノブタが闊歩している」「放射線量値はかなり高く、除染はすすまず、残土は山積みになっている(行政への不信)」「東電との補償交渉は官僚的で、杓子定規で、全く進まない(東電への怒り)」「二重生活での苦悩、心身の消耗、周囲の無理解などなど、こけし制作への意欲が??!」「原ノ町での復帰?他所への移住??!」、、、止めどもなく話されていました。
今回、「お世話になった方に少し作りました」と、「坂入ボックス(左端は順子さん作)」が送られてきました。これから、友の会新年例会頒布こけしを作ったら、また、休業だそうです。
お二人の生活が落ち着かれ、こけし制作に邁進でき得る環境になられんことを、ただ、ただ、希っています。