「あるこけし店主の話」

4月の土湯こけしまつりから始まったこけし行事も、10月の津軽こけし工人フェしてバルで終えました。私はこの1年、4月に今晃さんのこけし図譜「木おぼこ・今晃」を発行してから、4月の土湯、5月は白石と友の会例会、6月は青葉こけし会30周年祝賀会、7月は美轆会、9月は鳴子、10月は山形と遠刈田そして津軽へと、全てのこけし行事に参加して、みなさんに図譜発行やHP立ち上げ案内パンフを配布してきました。
 そして、多くのこけし愛好者や「コケ女」といわれる若い方々とも接してきました。鳴子こけしまつりや津軽こけし工人フェステバルでは、近来にない多くの方々がおられました。多くのこけしグッズのお店や展示されているこけしなどなど、何か、私がみる伝統こけしとは、チョット違う感覚がありました。そんな時、あるこけし店主から以下のような手紙をいただきました。   
     「あるこけし専門店主の話」
 こけしマニヤの移り変わりに、ここ数年、大きな流れがあったと思うことが多いです。第三次こけしブームは、少々大袈裟にしても、マニヤが増えたことは喜ばしいことではありますが、明るい兆しとは言えないと考えています。私が最初の1本を買い求めたのが昭和49年の40年前、20代の頃です。当時、こけしに興味を持ち始めるのが40歳過ぎの男性でした。男性はマニヤになりますが、女性はこけし愛好家で終わり、のめり込む方が少ないと思います。男性は夢中になって買い漁りますが、女性は堅実でどこか醒めています。
 ここ数年に増えた方々は女性の20代、30代の愛好家で、部屋で飾るこけしが何本かあればいいと考えている方が多いです。今の若い方の特徴は、4つの「ない」だと話をしています。
  1,数多く買わない。(せいぜい、1,2本。携帯で写真だけを撮って帰る方もいます。)
  2,古いこけしは買わない。(中古品こけしには興味を示さなく、1000円前後が多く、せいぜい  3000円止まりです。)
  3,大きいこけしは買わない。(7寸以上を買う人は少ない。私などは尺以上が大きなこけしと言っていましたが?)
  4,こけしの文献を読まない。(可愛い、小さなこけしに興味があるのであって、こけしの事には関心がありません。)
 当店に来られた若い方で、尺以上のこけし、こけし本に触る(見る)方は本当に少ないですね。現在は、伝統こけしらしいこけしは売れません。作並や山形は、以前から人気がありませんが、鳴子や遠刈田のこけしも、人気は全くありません。「人は増えましたが、明るい兆しじゃない」と言いましたのは、伝統こけしが求められない、何か、異質なもの(こけし)を若い方は求めていると思うからです。
 こけし工人には日々の生活がありますから、売れる物を作ることは、止むを得ないと思っていますが、厳しいことでもあります。敗戦後の20~30年代は、アメリカナイズがもてはやされ、伝統こけしは全く売れず、新型こけしブーム時代がありました。そこからの伝統こけしの脱却と再起は、先覚者達の尽力がありました。その状況は今と良く似ています。そのような第三次こけしブームといわれる新型風のこけしが売れるのも近々終えるものと思います。その次がどうなるか?!さらなる、伝統こけしの低迷期が訪れ、伝統こけしも消え去ってしまうのかと、大いなる危惧をしています。

「あるこけし店主の話」」への1件のフィードバック

  1. 私もこけし店主の言う通りであると思っています。
    先のネットオークションでの極美保存・大正期作品などを落札されて方々は、男性で熱狂的なマニアの方々です。
    一人でも女性が争奪戦に参加して、落札してくれたのか、疑問です。
    ブーム、ブームと人為的(メディアが主導)に煽がれるのではなく、確かな作品を提供できる工人の育成とその作品販路の開拓を伝統こけし界全体で考えて行かなければ、消滅の可能性が起こりうる処まで来ていると考えています。

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