今年、最後の「坂入ボックス」のこけしたちが届きました。右から菊模様(15㎝)大小中3本、白菊、山椒の葉、カエデ、ブドウ(レッドグローブ)、サトイモ、カキ、幸兵衛風ナナカマド、幸兵衛型ボタン模様です。左2本以外の胴模様は、油絵具を使って色鮮やかに描かれています。木地は、機械ロクロで、かなりの粗挽きです。
「木おぼこの会」第15回頒布こけし(ブログ「157・木おぼこの会第15回頒布こけし」http://sanejiro.sakura.ne.jp/main/?p=3967#more-3967 )も、このような粗挽きに、油絵具での描彩でした。会員の方々には、「このような木肌のこけしは初めて!」「油絵具で、描く?」と、驚いておられる方もおられました。木賊仕上げやバンカキ以前の粗挽き、鉋の切れ味なのです。この木肌を握りしめますと、掌、指にフィットし、温もりに馴染んでいくのです。「こけしを握りしめる」話をすると、みなさんにはびっくりされます。「こけしは手で触れ、その木地肌も味わうべき」と、私のこけしは、素手で触っていただきます。
四十年前、陶芸の旅で、奈良県水間町で辻村史郎(陶芸家)さんにお会いした。当時、辻村さんは、山奥の急斜面に、廃材を利用して小屋(家)を建て、穴窯で抹茶椀だけをひたすら作っておられました。小屋の真ん中には、囲炉裏があり、奥さんも、裸の子供たちと一緒に、板間に雑魚寝でした。子供たちは家では素っ裸で、街に出るときだけパンツを履いていました。土壁塗りなどの小屋作りを手伝ったお礼に、抹茶椀をいただきました。辻村さん曰く、「(山のような)椀の中には、坂入さんの手にあった椀があるだろう!」と。辻村さんの山奥での生活、子供を裸で育てる、手にあった茶碗の話を今さんにしたことがあった。(今さんも一時、子供さんを裸で育てておられたそうです。 )
今こけしの木地肌については、今さんは木地挽き後に紙やすりは掛けませんし、蝋掛けは一切しません。鉋の切れ味を大事にし、バンカキや木賊磨きで仕上げられます。平成26年1月、二人挽きロクロで制作をされた。そのロクロの回転の面白さや木地挽きの鉋の切れ味などを楽しまれておられた。機械ロクロになってからも、この木肌の面白さに魅かれ、製作をされておられます。その温もりを味わっていただきたいです。