坂入 良喜(さかいり よしき) 1950年7月28日生
津軽系こけし工人・今晃さんのこけし群を「木おぼこ・今晃」―今晃こけし図譜―としてまとめ、ここに、みなさんにお届けすることができました。これも、今こけし群を譲って戴いた秋田市の桑原金作さん(註1=こけし手帖平成22年9月596号「桑原コレクション・今晃こけし群を引き継ぐ」)、そして、その機会を作っていただいた宇部市の清俊夫さんには大変に感謝をしています。お二人にはこの冊子の序文を書いていただき、今こけしについてもいろいろとご教授をいただきました。また、大湯温泉花海館の花海邦子さんには、今こけしや木地玩具の提供をしていただきました。嶽温泉在住の写真家秋田幸宏さんには、四季折々の岩木山風景写真の提供をしていただきました。みなさんのご協力や励ましで、この図譜をまとめることができました。ここにおいて、心よりお礼を申し上げます。
今晃さんのこけし群10000余本があります。「今晃こけし・坂入コレクション」として3000余本を選び、この冊子「木おぼこ・今晃」―今晃こけし図譜―には、精選した600余本ほどを収録しました。桑原さんには、今晃さんのこけしの魅力や見方、「今晃こけし・坂入コレクション」の3000余本全てのこけし1本1本について書いていただき、「今晃のこけし」-今晃こけし・坂入コレクション解説―としてまとめました。この冊子は数部しか制作できませんでしたが、ブログ「今晃のこけし」で公開しています。ぜひ、みなさんにはご覧になっていただきたいです。
この冊子「木おぼこ・今晃」の表題は、当初は、「今晃の世界」と決めていました。今晃さんのこけしは、何々型・風を含め、「全てのこけしが今晃さんの世界で昇華され」、作り出されています。しかし、今さんが求められた「あるべき原津軽のこけし」、所謂、「本人型をどう捉えるか!」と言うことがあります。表題を「今晃のこけし」などとも考えました。しかし、「この『今晃』という冠詞のついた『今晃のこけし』では、本来あるべき共通概念、総体としての『こけし』と、何か違うであろう」との指摘に考え込んでいました。ある時、今さんから「僕は、『今晃の世界』というような、そんな狭い、小さな世界で、こけしは作ってはいないヨ」そして、「僕が作ってきたのは『こけし』とは、どこか違うのだなあ~、ただ、『おンぼこ』を作っているんだ」と語られた。「今さんは、私達が言っている『こけし』ではなく、まさに『木おぼこ』を作ってこられた」と、今さんのこけし制作への原点、その思いに気がつき、この図譜の表題を「木おぼこ・今晃」にし、今さんに書いていただきました。