「217」 走馬灯

 玄関の一輪挿しには、正月に挿した南天と若松が枯れ萎れて刺さっている。この1年の残渣である。妻が1月に「物忘れ外来受診」、3月に、アルツハイマー型認知症と診断されたのだ。このHPのブログ「213・筑波からの帰還」が、まさにその1年間であった。

 昭和48年(1998年)、特殊法人心身障碍者福祉協会国立コロニー「のぞみの園」に就職し、障碍者への生活支援を業とし、障碍者との共同生活をみて、昭和51年、趣味で(生活の糧を得んがために)焼き物を始めた。通称「行って来い」と言われる倒炎式の灯油窯を自作した。灯油のドラム缶20本も保管していたら、隣家が火事になって、砂や水を掛けて消防から隠した。その後は、プロも顔負けのシャットルキルンの特別仕様のガス窯である。一輪挿しは、柿沢是隆さんと是伸君に絵付けをしてもらったダルマ模様です。各機会での個展、退職記念やこけし関係、妻の退職や娘の結婚などで1000本ほども贈った。最後の窯で、今さんと笹森淳一さん、柿沢是隆さん、盛美津雄さんの絵付けの一輪挿しや各皿なども焼きます。

 退職(平成23年)前の10年間は、「のぞみの園」利用者の似顔絵を描いて遊んでいた。利用者の特徴を似顔絵で描くと、その個性さの強調に「障害を嘲笑って!」と批判があり、利用者の素顔、姿をそのままで描くようにした。お気に入りの(玄関口の)1枚、昌平さんはオイラと同郷の越後出身です。描いた似顔絵はみなさんの居室などに飾りました。それが、今の「こけし・工人似顔絵図譜」や「高崎まつり・ひと人展」となったのです。

  この1枚の玄関口風景は、オイラの人生を、この一年を走馬灯のように巡る。

             よい お年をお迎えください。

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